オリジナル小説サイトです。新刊書籍 王宮書庫のご意見番 恋するきっかけは秘密の王子様 発売中  異世界の本屋さんへようこそ! 全3巻 & 既刊 愛してると言いなさい全4巻 アルファポリス様より発売中です。よろしくお願いいたします
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 こんにちは、二度目のダウン中の安芸です。
 原稿あるのに……間をおかず風邪をひいてしまいました。微熱がひかず、咳がひどく、病院に行っても「咳は1~2週間とれないかも」と宣告されてしまいました。咳込んだら頭が痛くて思考が鈍るのに! おまけに熱があったらおとなしく寝ておけとPC禁止令を出されるのに!! 
 本日ようやく平熱になったので、PCの前に座れました。咳はまだとれません。のどが痛い……。
 皆様も体調管理にどうぞお気を付け下さい。

 Leviathan 遅ればせながら二話です。
<< 前の話

     
 南は翌日、同じ時間帯に公園へ足を運んだ。借りた傘を返すという立派な口実があるので話しかけるきっかけには困らない。
 午後二時までは学校で夏期講習があるので、それを受けてからいったん帰宅し、急いで支度をする。白のチュニックとデニムのミニスカートに黒のフラットサンダル、そして籐のかごバック。髪型は両サイドを軽く編み込んで、後ろはふわっと流した。ヘアアクセをするかどうか悩んだけど、あんまり頑張りすぎたおしゃれに見えてしまうかもと思ってやめておく。あと忘れちゃいけないのが日焼け止め。念のために汗ふきシートも持って行こうかな。
 南は昨日と同じ葉桜の木の下でそわそわしながら彼が偶然通りかかるのを待った。

「もう一度会ったら、なんて挨拶しようかなあ。こんにちは、かな? 初めまして、かな? それともお礼? ううん、やっぱり自己紹介を先にするべき?」

 再会を夢見ている間はなんだかとても幸せで、待ちぼうけを食ってもちっとも退屈しなかった。
 昨夜はついつい浮かれて幼なじみの佳澄(かすみ)にLINEで報告すると、速攻返ってきたのはシビアなメール。

『それってただの親切じゃないの?』
『でも、もしかしたら運命の出会いかもしれないし』
『うんめいのであいー? もしもーし、熱中症ですかー? 頭やられてませんかー?』
『熱中症じゃないし、頭やられてもいないよ!』
『じゃあ言うけど、あのさ、そんなに素敵な人だったならフツーに彼女がいると思うよ』
『うっ……』

 佳澄のツッコミは時々とっても手厳しい。
 南がわかりやすく凹んだのを察したのか、慌てて佳澄が取りなす。

『まあ傘を返したいっていうならそれはそれでいいけど、おかしな下心は持たない方が無難でしょ。だってどー考えても会えない確率の方が高いんだからさ』
『う、うん、そうだね。わかった……』
『……ちゃんと適当に諦めるんだよ? あんたって変に諦めが悪いから、おねーさんはちょっち心配』
『おねーさんって、佳澄の方が誕生日遅いのに!』
『ブッブー。残念でしたー。精神年齢は私の方が上でーす。だから忠告はよく聞くように! 勝手に思い詰めて一人で盛り上がるの禁止! ダメ、絶対!』

 佳澄は親切で言ってくれたのだろう。それはわかってはいたけれど、でもそんなに簡単に諦めたりもできなくて。
 南は待った。一日、二日、三日、四日……ただじっと待ち続けた。
 だが彼は現れなかった。
 会えないまま時間だけがいたずらに過ぎていった。

「七月も明日で終わり、かぁ」

 晴天だというのに傘を携え、最初に出会った葉桜の木の下に佇みながら、南は溜め息を吐いた。

 ――やっぱり、運命の出会いなんかじゃなかったのかも。ただの偶然で、相手にとっては小さな親切で、特別に思うこと自体が間違いだったのかも……。

 もし明日会えなかったら、もう諦めよう。と心に決める。今度こそ、絶対。
 というのも、期待しては失望して、をずーっと繰り返しているのでメンタル的にとてもきつい。背恰好や髪型が似ている男性を見かけては追いかけ、確認するたびに人違いだとわかりがっかりして、とぼとぼと重い足取りで家に帰る。
 あれから毎日、この調子で。
 最初こそバラ色の気分で舞い上がっていた南も、日が経つにつれ、徐々に現実が見えてきた。

「やっぱり佳澄の言う通り、無理があったんだよね……どこの誰とも知らない行きずりの相手と、偶然もう一度会おうなんて……」

 あの日、彼が消えた道の先を眺める。
 車道の向こう側の歩道沿いには商店やブティック、ファーストフード、カフェ、居酒屋、クリーニング店、美容室、書店、雑貨店、花屋、コンビニエンスストアなどが軒を連ねている。
 その中で一軒、庭付きで煉瓦造りの建物があった。
 奥にグリーンガーデンが広がる門前には真鍮のランプが置かれ、玄関横には花の寄せ植えのプランターがあり、アンティーク調の古い木の扉には小さなドアプレートが下げられている。
 一度、興味本位で門から身を乗り出し、友達とドアプレートの文字を確認したことがある。

<Leviathan>

 なんて読むのだろう? いまだに正しい読み方がわからない。
 公園に通い詰めて時間だけが無為に過ぎていく中、南がなんとなくその煉瓦造りの家を眺めていると、割と頻繁に人の出入りがあることがわかった。老若男女問わず、恰好も様々、時折は外国人まで混ざっている。
 門も普段はきっちり閉じているし看板もないので、店舗運営されているわけではない一般家庭なのだろうけど、それにしても大勢が出たり入ったりと忙しい。

「私には関係ないか」

 南は視線を頭上へと移した。抜けるような青空と力いっぱい輝く太陽が視界を埋める。

「暑いなー……」

 立っているだけでもじっとりと汗が流れて気持ち悪い。
 でも、彼は暑さとは無縁の涼しい様子だった。雨が降ったせいで余計に蒸し暑かったはずなのに、そんなそぶりは欠片もなかった。

 ――使って。
 ――返さなくていいから。
 ――じゃあ、さよなら。

 記憶に残る彼の声を思い出すたび、胸がどうしようもなく騒ぐ。
 こんなこと初めてなので、どうしたらいいのかわからない。
 ただ、もう一度会いたい。
 会って、お礼を言って、話をしたい。
 それから、それから――?
 手の中を見つめる。男物のシンプルな藍色の傘で、柄の部分に見慣れぬロゴ・マークが入っている。
 この傘の重みだけが唯一、彼と南を結ぶ絆だった。


<< 次の話  
目次


追記を閉じる▲
スポンサーサイト

【2014/10/24 12:27】 | Leviathan ――リヴァイアサン――
トラックバック(0) |
 新作 Leviathan リヴァイアサン です。

 短い夏の恋物語。
 スローテンポの連載となりますが、皆様に楽しんでいただけるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
<< 前の話



「彼氏かあ。いいなあ。羨ましいなー。あー、私もすてきな彼氏が欲しーい!」

 うっかり声が大きくなってしまったのは、本音も本音、心の叫びだったから。
 ついさっき、幼なじみからメールで『彼氏ができました』報告をもらって『おめでとう!』の返信を打ち終えたばかりで、友達の幸せを祝福する気持ちと妬む気持ちの両方に苛まれてしまった。

 高校二年の一学期終業式が終わったこの日(明日から夏休み!)、クラスメイトとファーストフードでおしゃべりした帰り道で受け取った一通のメールが、南(みなみ)の一生を変えた。
 新着メールの着信音にスマートフォンを見た南は道のど真ん中で思わず歓声を上げた。周囲からジロジロ見られて、慌てて歩道沿いの公園に足を向け、空いているベンチに座る。幼なじみに初の彼氏ができたことが自分のことのように嬉しくて、嬉々として返信を打つ。
 だけどメール送信したあとに、ふと寂しさと妬ましさが込み上げてきた。

 ……いいなあ、と。

 実のところ、南はまだ誰とも付き合ったことがない。告白したことも、告白されたこともない。それどころか、まともに恋をしたことがないのだ。
 だから、彼氏と彼女という恋愛関係にとても憧れている。
 好きな人が自分を好きって、どんな感じなんだろう? と、ちょっと考えるだけでなんだか楽しくて。その反面、好きな人すらいない自分にがっかりもして。
 心底、幼なじみが羨ましいと思った。

「私って心が狭い……」

 なんだか凹む。

 南がちょっぴり自己嫌悪に陥ったとき、雨が降ってきた。天気予報では降水確率二〇パーセントだったので傘は持ってきていない。
 南は左手にスマートフォンを握りしめたまま、右手で鞄を掴んであわててベンチから立ち上がり、近くの葉桜の木の下に移動した。
 公園内を見まわすと、同じように傘を持たない人たちが急いで木の下に避難していた。

「通り雨だったらいいけど」

 溜め息をついて木の幹に凭れかかり呟く。
 だが、南の願いに反して雨は瞬く間に本降りになった。公園に面した表通りの歩道を歩く人々はみんな手に傘を持っている。
 時計を見るとまもなく十八時で、このままだと夕食に間に合わない。
 コンビニでビニール傘を買うか、濡れるのを覚悟で走って帰るか。
 どうしよう、と悩んだそのとき、眼の前にスッと男物の傘を差し出された。

「使って」
「えっ。あの」

 突然の出来事に驚いて、南は眼の前の若い男性を見つめた。
 優しげで、少し憂い顔の端整な長身の男の人が傘を差し出して立っていた。
 猫毛の柔らかな茶色の髪、理知的でどこか物寂しげな茶色の眼は吸い込まれそうなほど澄んでいる。イノセントなまなざしが南に向けられていて、眼が合った瞬間に、時が止まったと本気でそう思った。
 まわりの風景や雑音がすべて消えて、南の視界には彼だけが映っていた。
 だから二言目を彼が喋ったときには、ちょっとおかしいくらい動揺した。

「返さなくていいから」

 耳に低く響く声は余韻が甘く柔らかく、南が戸惑っている間に傘の柄を手に握らされた。

「じゃあ、さよなら」

 こんな土砂降りの中、傘を他人に譲って自分はどうするの? と南が焦って引き止めようとしたとき、彼の傍にいた彼より一、二歳年上の男の人が自分の傘に彼を入れた。
 雨足がいっそう強くなる。
 傘を差し、家路を急ぐ人波にまぎれて彼らの姿が見えなくなったあとも、南は足が石になったようにその場から動けなかった。

 ……びっくりした。

 映画や小説や漫画にあるような非現実的な出来事が自分の身に起こるとは、信じられなくて。

 ……こんなことって本当にあるんだ……。

 しばらくぼーっとしたあと、我に返る。胸がドキドキした。顔が火照っている。これは夢なんじゃないかと疑い、手に握る男物の傘の存在で現実にあったことなのだと実感する。
 相手にしてみれば、小さな親切だったのかもしれない。
 でも南にとっては大事件だ。こんなにロマンチックなことが人生で何度もあるわけがない。

 これはもしかしたらもしかして、運命の出会いかもしれない――?
 まさか。
 まさか、そんな。でも。

 心臓が熱い。鼓動が異様に速い。頭もくらくらした。思考はパンク寸前だ。
 おそらく過剰反応だけど、免疫がないのだからしょうがないと思う。

 ――素敵な人だったな。
 ――また会えないかな……。

 南は背中に羽が生えたような、ふわふわした気持ちのまま大事そうに傘を差して家路に着いた。

<< 次の話  
目次


追記を閉じる▲

【2014/10/07 12:00】 | Leviathan ――リヴァイアサン――
トラックバック(0) |
 こんにちは、S様! コメントありがとうございます。

 返信が遅れまして申しわけありません!
 なぜか日本に帰国して風邪をひき、ダウンしておりました。とほほです。
 ロスト鞄、無事発見しました~。パリで迷子になっていたらしく、更にストライキ続行のため日本への搬送が遅れに遅れ、先日到着したしだいです。でも見つかってよかった~と安堵しております。ご心配おかけしました。
 海外旅行は飽きません。どの国に行っても、いいところが見つかります。イギリスはオススメです!
 ではでは、また。
 季節の変わり目ですので、体調にはお気を付け下さい。
 安芸でした。

【2014/10/04 13:47】 | 日々あれこれ
トラックバック(0) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。