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エミオン・二 お見合い相手は

 こんばんは、安芸です。
 
 愛してる~の次話がまだUPできないので、先にできあがっているこちらを更新。
 お時間のある方、おつきあいください。
<< 前の話


 いったいどうしてこんなことになったのだろう……?

 もう涙も枯れ果てた。
 エミオンは、ぐったりと疲れきっていたがノロノロとベッドから起きた。
 思いっきり泣きわめいたせいで、頭が痛い。こめかみのあたりが、ズキンズキンする。
 小卓におかれていた水差しからグラスに水を注ぎ、一気に飲み干す。
 喉の渇きはいやされたが、胸の痛苦はいやされない。

 ことの起こりは、六日前。

「縁談が決まった」

 と父に告げられたときは驚いた。
 反対していたはずなのに、急にどうしたのだろう?
 おかしな点はそれだけではない。肝心の縁談相手もおしえてくれなかった。ただ「決して失礼のないように」と念を押されたので、格上の家柄なのだと思った。
 同じ拝命十三貴族でも、上位三家はやはり別格だ。特に次の当主の第一夫人ともなれば、相当高いスキルが要求される。
 本当に三家のどれかだったら引きはすごいが、あまり嬉しくない。

「……そんなに立派な家でなくてもいいのに」

 エミオンは正直「気詰まりしそうでいやだなあ」と思ったが、縁談を望んだのはほかでもない自分だ。いまさら、いやもなにもないだろう。

 覚悟を決めよう。

 貴族の『縁談』は、選択権は男性側にある。条件に折り合いがついた段階で見合いの場がもうけられ、男性が女性を気に入れば婚約となる。女性に拒否権はない。
 
 そして、見合い当日。
 馬車が着いたのは王宮だった。
 不審に眉をひそめるエミオンが案内された応接間に待っていたのは、ゼクス王子だ。
 茫然とするエミオンの耳に、ゼクス王子が冷たい声で囁いた。

「あなたは私の妻になるのだ」と。

 家には帰してもらえなかった。
 そのまま南の棟――王子の住居棟――の一室に押し込められた。泣けど叫べど、誰も来ない。一昼夜が経過した。食事と水を運ぶ侍女のほか、ゼクス王子も姿を見せない。

「どうして……」

 もう何百回も同じ問いを繰り返している。
 あれほどゼクス王子以外なら誰でもいいと言っておいたのに――よりによって、なぜゼクス王子の妻にならなければいけないのか。
 父さまも母さまもどうかしているとしか思えない。
 いや、一番どうかしているのはゼクス王子だ。
 なぜひどく嫌っている相手を妻に選ぶなど、ばかげた真似をするのだろう?
 それともまさか、形ばかりの妻にしておいて、愛人を囲って侮辱するつもりだろうか?
 あるいは、もっと陰険な方法でいためつけられるかも……。
 エミオンはしゃくり上げた。あれほど泣いて、もういいかげん涙も尽きたと思ったのに、まだ無尽蔵にわいてくる。
 ゼクス王子の凛とした背を思い出す。
 エミオンを妻にすると宣言した直後、「仕事がある」と言って立ち去った。振り返ることもしなかった。

「……これもあたらしい苛めなの?」
 
 ぞっとした。
 一生、ここでなぶりものにされるくらいなら、死んだ方がましだ。

 ――死。

 不意に芽生えた暗い誘惑に、エミオンの心臓はたかぶった。
 究極の現実逃避だ。なんて甘くひびくのか。
 死んでしまえば、もうゼクス王子にいびられずにすむ。心ない言葉に傷つくこともなく、嘲笑や罵詈雑言を浴びることもない。冷たく見つめられたり、手を振り払われたり、迷惑そうに拒否されたり、自分がとるにたらない存在だと――思い知らされずにすむのだ。

 ――いや。
 ――もうこれ以上、ゼクス王子に傷つけられるのはごめんだ。
 ――まして、心も身体もすべてを委ねなければいけないなんて拷問にひとしい。

 エミオンは手の甲で眼元を拭った。
 心が決まった。
 短剣がほしい。
 貴族の女の自決は短剣で喉を突くと相場が決まっている。
 エミオンはやっきになって部屋中を探した。だが短剣はみあたらない。それどころか代用できそうなものがなにひとつない。筆記用具すらおいてないなんて、どういうことだ。
 しだいに、動悸が速くなってくる。
 思い詰めるあまり、気が変になりそうになったエミオンの耳に控えめなノックが届いた。


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では、物語が少しでも皆様の心に届きますように……。

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