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 こんばんは、安芸です。

 ようやく、ようやく、修羅場が終わりました。
 半年ぶりの自由です。なにを書こう。なにを書いてもいいんだー!
 浮かれています。
 浮かれている割に、陰気な受難~のUPです。
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「なにもお召し上がりになりません」
 
 そう報告を受けたゼクスは厨房に立ち寄り、エミオンの好物であるラクの実(かんきつ系の果物)をむいたものを皿に盛って持参した。
 侍女をひとり伴ってエミオンの部屋を訪ねたものの、ノックをしても返答がない。
 不審に思い、扉番をする二人の女騎士に「開けろ」と命じる。
 部屋は静まり返っていた。
 ひとの気配はするのに緊迫感が漂っている。
 ゼクスは嫌な予感がして皿をテーブルに置き、急いで奥へ向かった。無作法は承知で寝室の扉を破るように勢いよく開ける。
 まさにその瞬間、エミオンが引き裂いたシーツで輪をつくり、シャンデリアに結びつけて首を吊ろうと椅子を蹴ったところだった。
 ゼクスの剣が閃く。シーツは両断され、エミオンは悲鳴を上げて落下した。

「っ」

 ゼクスは体勢を崩したエミオンを片腕で受け止め、激しく咳き込むエミオンを心配した。

「無事か!?」

 だが問いかけるゼクスの手は冷たく振り払われた。触れられるのもがまんならないというように、エミオンは身体をよじり、ゼクスを突き放そうと暴れる。

「……わ、たし、に……さ、わら……ない、で……っ」

 苦しいのか、呼吸が細い。
 もしかしたら、一瞬首が絞(し)まったのかもしれない。
 ゼクスは嫌がられるのも承知でエミオンを一気に抱き上げてベッドに運び、水を注(つ)いで持ってきた。
 身体を抱き起こし、水を飲ませようとしたところ抵抗された。
 エミオンは怒りと憎しみに燃える眼をゼクスに向けて言い放つ。

「さ、わらない、で、と言っている、で、しょう……っ」

 頑なに拒まれる。
 だが蒼褪めて身体をくの字に折り曲げ、喘鳴を漏らすエミオンをとうてい放ってはおけず、ゼクスはむりやり水を飲ませた。

「はあっ、はあっ、はあっ……っ」
「……大丈夫か?」

 ゼクスはエミオンの呼吸がおさまるまでずっと背を撫でさすっていた。
 その間、エミオンはまったく緊張を解くことなく、声が出せるようになると開口一番こう叫んだ。

「誰も助けてくれなんて言っていないでしょう!」

 怒り心頭、ゼクスを睨む。

「……なんだと?」

 だが、腹を立てているのはゼクスの方だ。
 千切れたシーツを手に取り、エミオンに突きつける。

「これはいったいなんの真似だ」
「短剣がなくて、他に死ぬ方法を選べなかったんです」

 あっさりと自決の覚悟を表明するエミオンにゼクスは言葉を失った。
 エミオンはゼクスの手が触れた部分をけがらわしい、というように手で払うしぐさをした。

「あなたの妻になるくらいなら、死んで冥界の王の妻となる方がましです」

 これ以上にない拒絶にゼクスは打ちのめされた。

 ――憎まれている。
 
 嫌悪なんてものじゃない。憎悪されている。
 ゼクスの心は木っ端みじんに粉砕された。眼の前が真っ暗になり、足元に奈落が開いて、真っ逆さまに落ちていく絶望を味わった。

「そうか……」

 それほどまでに、嫌われているのか。

「……こんなに好きなのに、私ではだめなのか……」

 ゼクスのかすかな呟きはエミオンに届かない。
 失意のどん底に滅入りながら、ゼクスは寒々しい微笑を浮かべた。
 エミオンが危険を察して身を退きかけたところ、ゼクスはエミオンの手首を押さえつけた。

「……許さない……」

 低いゼクスの唸り声を聞きとってエミオンの顔が畏怖(いふ)に歪む。
 ゼクスはエミオンをきつく見据えたまま「入れ!」と怒鳴った。
 おずおずと、寝室の入り口に侍女が立った。その姿を見てエミオンは驚愕した。

「チャチャ!」
「お嬢様!」
「動くな」

 ゼクスの一声で侍女がびくりと静止した。

「……もし次、また同じことがあれば、その娘を犯して殺す」
「ひっ」

 侍女が恐ろしげに大きく息を吸い込んだ。
 ゼクスは更に声音を深め、眼光を鋭く研(と)ぎ澄まして続けた。

「その娘を逃がしても、母親、縁者、すべて殺す」
「……なんてひとなの!」

 ゼクスの脅迫にエミオンは恐怖よりも怒りを感じたようで、怒気に肌を赤く染め上げた。
 こんなときだが、美しいと思った。
 眼がエミオンに酔って、くらっとする。ほんの近くにいる。ただそれだけで震えるほど嬉しい。
 生きて傍にいられれば、それこそ至福というものだ。

「あなたを冥界の王になど渡さない。いや」

 ゼクスはエミオンから離れてゆっくりと立ち上がり、冷やかに告げた。

「他の誰にも渡さない」


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2012.07.06 / Top↑
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